~ChatGPT教室でのひとコマ:講師と生徒の対話から~
私たちは今、AIという新しい"鏡"を手に入れました。
この鏡は、これまで気づかなかった社会の課題や、見過ごされてきた人々のニーズを映し出してくれます。
その一例を、ある受講生との対話を通してご紹介したいと思います。

「先生、ちょっと聞いてもらえます?」
ChatGPT教室の終了後、Tさんが話しかけてきました。
Tさんは学習塾を経営しており、生徒指導にAIを活用できないかと考えている方です。
「はい、どんなことでしょうか?」
「うちの塾の生徒たちが、ChatGPTにどんどん質問するようになったんです。最初は心配だったんですが、見ていると、あれはあれでなかなか興味深い現象でして」
「どんな現象ですか?」
「普段は質問をあまりしない生徒が、ChatGPTには積極的に質問しているんです。特に、基礎的な内容について」
「なるほど。それは興味深い観察ですね。なぜだと思いますか?」
「たぶん…AIだと『バカにされない』からじゃないでしょうか。『こんな基本的なことも分からないの?』って顔をされる心配がない」
「そうですね。AIは怪訝な顔一つせず、どんな質問にも真摯に答えてくれますからね」
「この現象に気づいてから、自分の指導方法を見直すようになりました」
「面白そうな話ですね」
「たとえば、生徒が『そんなことも分からないの?』と感じそうな質問をしたとき、『そんなことも分からないの?』っていう顔をしないように気をつけるようにしています。もしかすると、これまで、私の表情や態度が無意識のうちに変わっていたかもしれませんし」
「なるほど。AIが"鏡"となって、見えていなかった課題が見えてきた、ということですね」
「でも先生、AIに質問が集中するのって、教育上よくないと思います?」
「それは一概には言えないと思います。むしろ、人間の教師には聞きにくい質問があるという事実こそ、私たちが向き合うべき課題なのかもしれません」
「そうですね。あと、他にも気になる現象があって、生徒によっては、同じ質問を何度もAIにしているんです。人間の教師に対してだと、何度も同じことを聞くのは申し訳ないと思うみたいで」
「ああ、それも重要な観察ですね。人間関係では『何度も同じことを聞く』ことへの心理的障壁がある。でも学習には、時には繰り返しの質問が必要なこともある」
「そうなんです。AIの登場で、そういう『当たり前すぎて気づかなかった』課題が見えてきた気がします」

「似たような現象は、他の分野でも起きているようですよ。たとえば、カウンセリングの世界でも。人間のカウンセラーには相談できない悩みでも、AIなら相談できるという人が増えているそうです」
「それって、カウンセリングの新しい可能性ですよね」
「はい。でも同時に、人間のカウンセリングの『見えない壁』も浮き彫りにしている。なぜ人間には相談できないのか。その理由を考えることで、カウンセリングのあり方自体を見直すきっかけにもなる」
「教育でもカウンセリングでも、AIの存在が人間に課題を気づかせる…」
「そうですね。AIは単なる便利なツールではない。私たちの社会や制度の『見えない課題』を映し出す鏡でもあるんです」
「でも先生、そうなると人間の役割って、どうなっていくんでしょう?」
「どうなるんでしょう。ただ、私は楽観的に考えています」
「というと?」
「AIの登場で見えてきた課題に向き合うことで、むしろ人間にしかできない役割が明確になってくるんじゃないでしょうか」
「人間にしかできない役割…」
「たとえば、さっきの塾の例でいえば、『質問しやすい環境づくり』の重要性に気づいたのは人間の先生であるTさんですよね。AIは課題を可視化してくれましたが、その課題に気づき、改善しようとしているのは人間なんです」
「なるほど…」
「AIは私たちの"鏡"となって、これまで気づかなかった課題を映し出してくれる。そして私たち人間は、その課題に向き合い、より良い未来を作っていく。そんな協力関係が築けるんじゃないでしょうか」
「AIと人間、それぞれの得意分野を活かしていく、と」
「そうですね。AIの登場で見えてきた課題の数々は、私たちがより良い社会を作っていくためのヒントなのかもしれません」
(この記事は、ChatGPT教室での対話をもとに構成されています)