「知識や経験を活かして、新しい人材を育てる」
これは、多くの方が心の片隅で温めている夢ではないでしょうか。
特に、長年仕事を続けてこられた方の中には、「自分の経験を次世代に伝えたい」「培ってきたノウハウを社会に還元したい」と考える方も少なくありません。
この思いを実現する1つの方法が、養成講座の主宰です。
養成講座は、単なるセミナーやワークショップとは一線を画す、体系的な学びの場です。
そして今、AIの進化により、この養成講座の可能性は大きく広がろうとしています。
本記事では、養成講座というビジネスモデルの特徴や魅力を解説するとともに、AIとの協働によって実現できる新しい価値について、具体的にお伝えしていきます。
では、養成講座ビジネスの世界をのぞいてみましょう。

「養成講座を主宰すること」は、スモールビジネスに向いているモデルの1つです。
向いている理由には、
- 持っている知識・経験・スキル・ノウハウを講座という商品にできる。
- 講座を自分で作ることができるなら、少ない元手で始めることができる。
- 養成講座の受講者が新たな人脈となる。
などがあります。
なお、ここでいう「養成講座」とは、単発のセミナーのようなものではなく、「ある分野(※)の専門人材を養成する」ことを目的とした、体系的なものを指します。
(※)あなたが得意な分野を指します。
養成講座のキャッシュポイント
養成講座ビジネスの売上の源泉は、まずはなにより、受講料にあります。
受講料は、高く設定します。
なぜなら、
- 受講料は収益の柱だから
- 養成講座はふつうの講座やセミナーより 価値が高いから
です。
養成講座の価格設定を高くするかわり、
- 説明会を用意する
- 比較的安価なフロントセミナーを用意する
といった集客の工夫もよく行われます。
受講料を高く設定することで、損益分岐点がグッと下がります。
損益分岐点を超えた時点から利益率がどんどん上がります。
たとえば私が関わったある養成講座は利益率が8割を超えることがありました。
養成講座の構造設計
養成講座は
「基礎講座→応用講座、といった2段階」
あるいは
「初級講座→中級講座→上級講座、といった3段階」
に設定することもできます。
段位制をとりいれるなどして何段階にも設定するケースもあります。
2段階にせよ3段階にせよ、段位制にせよ、受講を検討している人に
「各段階がどう違うのか」
がしっかり伝わるように、伝え方を工夫する必要があります。
なお、養成講座の修了生に試験を実施し、合格者に「〇〇アドバイザー」などの肩書(認定)を提供するケースもしばしば見られます。
養成講座の課題
養成講座をはじめるにあたってもっとも悩ましい問題は2つあります。
受講者を集める
1つは、
「受講者をどう集めるか」
という問題です。
これまで教室などをしていて、生徒さんのリストがあるなどの場合は、それを活かすところから始めます。
「いままでは単発の教室だったけれど、養成講座を始めたので体系的に学んでほしい」
といったメッセージを伝えます。
既存の生徒さんに講座をあらためて受けてもらうために、「体系的」であるという点をしっかり伝えます。
そうしたリストがない場合は、
- 広告宣伝
- プレスリリース
- 情報発信
などを工夫すると同時に、コツコツとでもリスト作りを進めることになります。
修了後のフォロー
もう1つは、
「養成講座で「養成」した人を、その後、どのように扱うのか」
という問題。
- 仕事を紹介するのか
- 自助努力に任せて放置するのか(※)
- その中間のサポートをしてあげるのか
このあたりの方針も、講座の設計段階から考えておく必要があります。
(※)「自助努力に任せて放置する」は、一見、道義的によくないイメージがあるかもしれません。
せっかく養成講座を受けてくれた人には、よい結果に導いてあげたいですしね。
ところが興味深いことに、講座によっては
「自助努力するから放置してほしい」
と望む受講生が、案外多いことがあります。
詳しい話は、またの機会に。
3つめの課題
さきほど
「養成講座をはじめるにあたってもっとも悩ましい問題は2つ」
と書きましたが、人によってはもう1つあります。
教えるのがうまい人、陽キャラの人ほど、ここが手薄、後まわしになるようです。
それは、事務局対応、の部分です。
- 日常的な問い合わせ対応
- 受講申込者とのやりとり・連絡
- 試験や課題などの取り扱い
- 教材の発送・合格証などの発送
などです。
要するに、
「細かいのに量が多くて面倒だけど、講座運営には欠かせない…」
そういった作業を、いったいだれにやってもらうのか問題です。
講師であるあなたが担当するのはあまりよい考えではありません。
料理人はおいしい料理を作ることに専念すべきであり、注文取りや会計の仕事に忙殺されてはいけないのと同じです。
だれかにやってもらいましょう。
あるいは、AIを育ててAIが対応できるようにします。
養成講座の今後
人生100年時代に向けて、養成講座の重要性と可能性は今後さらに高まっていくでしょう。
知識や経験を体系的に学べる養成講座は、人々の「学び直し」ニーズに応える重要な選択肢となっています。
受講者の動機は様々です。
長い人生を有意義に過ごしたいという積極的な思いから、あるいは経済的な不安や焦りから、新たなスキルを身につけようとする人が増えています。
一方で、講座を提供する側も変化が求められます。
オンラインでの受講ニーズの高まりに対応し、対面とオンラインのハイブリッド型の講座設計や、時間や場所に縛られない柔軟な学習環境の整備が必要になってきています。
また、単なる知識やスキルの伝達にとどまらず、受講者同士のコミュニティ形成を支援し、学びを通じた新たな人間関係づくりをサポートする機能も重要になるでしょう。
これは、長い人生における精神的な支えにもなり得ます。
養成講座は、提供者側にとってはビジネスモデルとして、受講者側にとっては人生の転換点として、双方にとって大きな可能性を秘めています。
100年人生時代の「学び」と「つながり」を支える重要な社会インフラとして、さらなる進化が期待されます。

養成講座とAIの相性
養成講座ビジネスは、実はAIとの相性が抜群に良いビジネスモデルです。
なぜなら、養成講座の運営者が直面する様々な課題に対して、AIが強力な支援ツールとなるからです。
たとえば、事務局対応の課題について考えてみましょう。
先ほど触れた「細かいのに量が多くて面倒だけど、講座運営には欠かせない」作業。
これこそ、AIの得意分野です。
インハウスAIを育てることで、問い合わせ対応や受講者とのやり取り、教材発送の管理などを効率化できます。
講師はより本質的な仕事、すなわち講座の品質向上や受講者との対話に集中できるようになります。
さらに興味深いのは、AIを活用することで養成講座自体の付加価値を高められる点です。
たとえば、各受講者の理解度や進捗に合わせて、カスタマイズされた補足教材を自動生成することが可能です。
受講者からよく出る質問をAIに学習させておけば、24時間365日、質問に答えられる「デジタル講師」として機能させることもできます。
AIを活用した養成講座の進化
従来の養成講座に、AIならではの創造的な要素を加えることで、講座の魅力は大きく向上します。
たとえば、分身AI(アバターAI)の技術を活用すれば、講師の知識や経験をAIに学習させ、受講者が好きな時に相談できる環境を整えることができます。
また、アプリAIを活用して、受講者の学習をサポートする診断ツールや練習問題を作成することも効果的です。
これにより、受講者は自分のペースで学習を進められ、かつ、常にフィードバックを得られる環境で学ぶことができます。
特に注目したいのは、AIを活用した「コミュニティ形成」の可能性です。
AIが受講者同士の相性を分析し、学習目的や興味が近い受講者同士をマッチングすることで、より活発な学び合いの場を創出できます。
これは、先ほど触れた「学びを通じた新たな人間関係づくり」をより効果的に実現する方法となります。
これからの養成講座運営者に求められること
AIの活用は、養成講座の運営者に新たな視点をもたらします。
もはや「教える」だけでなく、「AI活用環境をデザインする」という視点が重要になってきています。
ただし、ここで覚えておきたいのは、AIはあくまでも「支援ツール」だということです。
養成講座の本質的な価値は、運営者の知見や経験、そして受講者との信頼関係にあります。
AIを活用する際は、「人間にしかできないこと」と「AIに任せられること」を見極めることが大切です。
たとえば、受講者の悩みに深く共感し、個々の状況に応じたアドバイスを提供することは人間の役割です。
一方、データ分析や資料作成、スケジュール管理などは、AIが得意とする分野です。
このように、AIと上手に協働することで、養成講座はより進化した形で、人生100年時代の「学び」と「つながり」を支える場となっていくことでしょう。