「AIに毎回同じこと言うの面倒になってきた」
先日の ChatGPT 教室で、ベテラン受講生のTさんからそう声をかけられました。
彼は定年後に始めた革製品の工房で、AI を活用したマーケティングを模索していました。
「毎回 "私は革製品職人です。仕事の内容は…" って説明してるんだよね。面倒くさくて」
確かに面倒です。
自分について、自社について、何度も同じ説明を繰り返している方は多いのではないでしょうか。

AIとの対話で、こんな経験はありませんか?
- 「私はこういう仕事をしています...」と毎回説明している
- 自社の商品やサービスについて、毎回基本情報から説明している
- 業界特有の用語や考え方を、AIが理解していないためやり取りが噛み合わない
- プロンプトが長くなりすぎて、入力が面倒になる
これは、人間同士のコミュニケーションでは起きない問題です。
同僚や友人、長年のパートナーは、あなたの背景を知っています。
説明不要で会話が成立します。
しかし AIは毎回、「はじめまして」の状態から始まります。
だから背景説明や事情説明などの「面倒な情報提供」が必要になります。
▽
ここで私がお勧めしているのが「自分取説」あるいは「自社取説」の作成です。
毎回同じ説明を繰り返すなら、定番を作ってしまえばいい。
どうせ作るなら、整理してまとまったものを作ろう。
Tさんはこのアドバイスを受け、革工房の歴史、取り扱う皮革の種類、製造工程、顧客層、競合との差別化ポイントなどをまとめた1枚の資料を作成しました。
「これを毎回の会話の冒頭で貼り付けるようにしたんです」と、次の教室で彼は報告してくれました。
結果はどうだったでしょう?
「まるで長年の付き合いがある助手と話しているみたいになりました。あれこれ説明しなくても、背景を理解した上で会話が始まる。時間の節約にもなるし、何より対話の質が変わりました」
Tさんは特に、自分の工房特有の革の染色技法について説明を入れておいたことで、AIがその知識を前提に具体的なアドバイスができるようになったことに驚いていました。
取説には、以下のような要素を含めるとよいでしょう。
|
これらをA4用紙1枚程度にまとめておくだけで、AIとの対話は格段に深まります。
使い方は、Tさんのおっしゃるように、セッションの冒頭で貼り付けます。

こうした「取説」の考え方は、私たちAIコンサル工房が提供している「専属AI(インハウスAI)」の原理と同じです。
専属AIは、こうした情報を詳細に、体系的に学習させることで、あなたのビジネスパートナーとして機能するよう設計されています。
しかし、通常の(素の)ChatGPTやGemini、Claudeでも、会話の冒頭でこうした情報を提供するだけで、驚くほど対話の質が向上します。
▽
「取説作りは、自分自身を見つめ直す良い機会にもなりました」とTさんは言います。「自分のビジネスの強みや、大切にしていることを改めて言語化するプロセスが、思いがけず有意義だったんです」
AIとのコミュニケーションを深めるための「自分取説」。
単なるツールではなく、自己理解を深めるきっかけでもあるのかもしれません。
明日からの対話が、もっと豊かになりますように。