お賽銭のビジネスモデル

はじめに

「買ってもらうためには、価格に見合うメリットを出さなければならない」

そう思い込んでいる人は、たくさんいます。

当然のように思われています。

 

ですが、「そうとも限らない」というのが今回のテーマ。

日本人はなぜお賽銭を払う?

神社のお賽銭について考えてみましょう。

日本人はなぜ神社に行ったらお賽銭を払うのでしょうか。

 

お賽銭によってモノを買うわけではありません。

お賽銭を払っても、神社は何のサービスもしてくれません。

お礼すら言ってくれません。

 

それが分かっているにもかかわらず、日本人はお賽銭を払います。

それどころか「二礼二拍手一礼」までします。

お金を払ったうえに頭も下げます。

お賽銭を投げる前に手水で手を清めます。

 

ビジネスとして経済合理性として考えたら、こんな不思議な現象は理解できないはず。

 

お賽銭を払うのはなぜでしょうか。

人によってその答はさまざまでしょう。

ですが、日本人という集団の、奥深いところにある潜在意識としては「日本という国に属していたい」「神社がなくならずに存続してほしい」という根雪のように固い感情があるのではないかと想像しています。

お賽銭の金額を増やす戦略

そんな「神社のお賽銭」ではありますが、「お賽銭の金額を増やす戦略」というものを仮想で考えることができます。

実際に世の中の神社が「お賽銭の獲得戦略」なんて下世話なことを考えているかどうかは別として、仮に、神社の立場になって戦略を考えてみましょう。

 

北風の発想

 

賽銭箱を大きくすればお賽銭が増える?

おそらく無理でしょう。

 

賽銭箱を豪華に飾り立てたら、お賽銭は増える?

いや、増えないでしょう。

 

「いつもの半分の賽銭でご利益が得られる半額キャンペーン」みたいなのはどうでしょうか。

たぶんダメでしょう。

むしろ参拝者に嫌われる可能性が大。

 

ポイントカードでも作って賽銭のたびにスタンプを押す?

これもあまり効果的とは考えにくいです。

 

つまり、ダイレクトにお賽銭を増やそうとする発想ではうまくいきません。

 

ダイレクトにお賽銭を増やそうとする発想のことを、イソップ寓話の「北風と太陽」になぞらえてここでは「北風発想」と呼びましょう。

「北風発想」は逆効果になることが多いです。

 

太陽の発想

 

そこで、「太陽発想」で考えてみます。

 

たとえば、桜の木を何本も境内に植えておくとしましょう。

すると、花見の季節には満開の桜を見にくる参拝客が増え、結果的に賽銭が増えます。

 

また、たとえば、屋台を集めて境内で営業してもらうとしましょう。

参拝客が増え、結果的に賽銭が増えます。

 

「北風と太陽」でいうところの「太陽」の戦略にあたります。

 

境内理論

 

ようするに、境内に人が集うようにすれば、お賽銭は増えます。

極端な言い方をすると、「どんな理由であれ人が集まりさえすれば、ものを売ろうとしなくても、そこに賽銭箱を置いておくだけで一定の確率でお金が入ってくる」ということになります。

 

私はこれを「境内理論」と呼んでいます。

コミュニティをマネタイズするときなどに有効な考え方です。

お賽銭のビジネスモデルから学ぶAI活用戦略

AIとコミュニティマネタイズの新しい可能性

 

先ほど紹介した「境内理論」は、今日のデジタル時代においても、特にAIを活用したビジネス展開において重要な示唆を与えてくれます。

AIを活用したコミュニティづくりにおいても、コミュニティであるかぎり、同じような原理が働くのです。

 

たとえば、無料のAIチャットボットを提供している企業を考えてみましょう。

一見すると「お金を取らないのにどうやって収益を上げているのか」と不思議に思えます。

しかし、これは神社のお賽銭と似た原理で機能しています。

人々が集まる「デジタルな境内」を作り、そこで自然な形で収益化の機会を見出しているのです。

 

インハウスAIによる「デジタル境内」の創造

 

小規模ビジネスにおいても、インハウスAIを活用して同様の効果を生み出すことができます。

たとえば、あるパン屋さんが、自社の商品知識やレシピを学習させたインハウスAIを、潜在顧客に対し無料で公開したとします。

このAIは、パンづくりのコツや保存方法、アレンジレシピなどについて、気軽に相談できる相手となります。

 

このAIとの対話を通じて形成されるコミュニティは、まさにデジタル時代の「境内」といえます。

直接的な売り上げを求めなくても、このコミュニティに集まった人々は自然とその店のファンとなり、実際の購買につながっていくのです。

 

分身AI(アバターAI)による「太陽戦略」

 

「北風と太陽」の教訓は、分身AI(アバターAI)の活用にも当てはまります。

たとえば、料理研究家が自身の分身AIを作成し、レシピや料理のコツを24時間相談できるようにする。

このAIは強制的に商品を売り込むのではなく(北風戦略)、むしろ気軽に相談できる存在として機能する(太陽戦略)ことで、自然とファンやコミュニティが形成されていきます。

 

アプリAIで実現する新しい「賽銭箱」

 

アプリAIを活用して、現代版の「賽銭箱」を創造することもできます。

たとえば、無料の診断アプリを提供し、その中で自然な形でビジネスチャンスを見出す。

これは、お賽銭と同じように、強制ではない自発的な支払いを促す仕組みといえます。

おわりに

AIコンサル工房のChatGPT教室では、このような「境内理論」のデジタル展開についても、随所で紹介しています。

コミュニティ形成とAI活用を組み合わせた収益化戦略について、具体的な事例とともに解説しています。

文系の方でも理解しやすい形で、最新のAI活用法を習得できる場を提供しています。

 

伝統的なビジネスの知恵とAI技術を組み合わせることで、新しいビジネスの可能性が広がっているのです。