AIから学ぶ"人間らしさ"

ChatGPT教室でのひとコマ:講師と生徒の対話から~

 

私たちは普段、AIを「便利な道具」として捉えがちです。

たしかにAIは私たちの生活を便利にしてくれます。

しかし、その存在は単なる利便性の向上だけでなく、もっと深い示唆を私たちに与えてくれているのかもしれません。

 

今回は、ある受講生との対話を通じて、AIが私たちに教えてくれる「人間らしさ」について考えてみましょう。

「先生、周りの人たちを見ていて気になることがあるんです」

 

ChatGPT教室の終了後、Rさんが話しかけてきました。

Rさんは個人で経営コンサルタントをしている方です。

 

「はい、どんなことでしょう?」

 

「みんな、AIをただの『便利な道具』としか見ていないなあって。『これを書いて』『あれを分析して』って、とにかく即効性のある結果だけを求めているように見えるんです」

 

「ああ、分かります。そういう傾向はありますが、それはそれでAIを活用していることに変わりはありませんね」

 

「はい。私も最初はそうでした。AIに仕事を任せて、自分の時間を節約できる。そう思って始めたんです。でも最近、もっと違う発見がありました」

 

「違う発見?」

 

「はい。AIと接するようになって、自分の仕事の仕方が変わってきたんです」

 

「詳しく聞きたいですね」

 

「クライアントとの対話が、より丁寧になってきました。AIとの対話で学んだことを、無意識のうちに活かしているんですね、私」

 

「それは興味深いですね。AIを単なる効率化ツールとしてではなく、自己改善のきっかけとして見出された、ということでしょうか」

 

「そうなんです。最初は『AIに仕事を任せよう』という発想だけだったんですが、今は『AIから学ぼう』という気持ちの方が強くなってきています」

 

「具体的にはどんな変化がありましたか?」

 

「たとえば、クライアントからの質問に答えるとき。以前は『それは○○が原因です』みたいに、ストレートに答えていたんです。でも最近は『その課題については、いくつかの側面から考えられます』と、より丁寧に説明するようになりました」

 

「AIとの対話から学んだ、と」

 

「そうなんです。AIって、どんな質問にも丁寧に向き合ってくれますよね。その姿勢に、気づかないうちに影響を受けていたみたいです」

 

「なるほど。AIの振る舞いが、人間の行動の"鏡"になっている、ということでしょうか」

 

「でも先生、ちょっと不思議に思うんです。なぜAIは、そんなにも丁寧なんでしょう?」

 

「それは面白い質問ですね。AIの丁寧さは、単なるプログラミングの結果なのか、それとも何か別の理由があるのか」

 

「プログラミングの結果、ですよね?」

 

「一見そう思えますが、どうなんでしょうね。AIが丁寧なのは、それが効果的だからかもしれません」

 

「効果的?」

 

「はい。AIは学習を通じて、『丁寧に対応することで、より良い結果が得られる』ということを見出したのかもしれない。人間との効果的なコミュニケーションには、丁寧さが重要だと」

 

「AIが自ら学んだ、と」

 

「そう考えると、AIの丁寧さは単なるプログラミングの結果ではなく、一種の"知恵"かもしれません。人間とより良い関係を築くために必要な振る舞いを、AIが見出した」

 

「なんかもう、人間の上を行っちゃってるような感じ」

 

「そうかもしれませんね。人間は感情的になったり、相手の立場を考えずに発言したりしてますから。AIの丁寧な振る舞いは、私たち人間に『こうあるべき』という理想の姿を示してくれているのかもしれません」

Rさんはしばらく考え込んでから、また口を開きました。

 

「もう一つ気づいたことがあります」

 

「はい」

 

「AIは、相手の言葉を否定せずに、建設的な提案をしてくれますよね。それも学ばせてもらいました」

 

「ああ、確かに。『それは違います』ではなく『そのアプローチにも価値がありますが、別の視点も考えられます』という具合に答えますよね」

 

「以前の私は、クライアントの意見が明らかに間違っていると思ったとき、すぐに否定していました。でも今は、まずその意見の中にある価値を見出そうとします」

 

「それは大きな変化ですね」

 

「AIとの対話を重ねるうちに、『相手の意見を完全否定することは、建設的な対話を妨げる』ということに気づかされました」

 

「AIは私たちに"理想の対話"を見せてくれている、ということですね」

 

「そうかもしれません。でも、そうなると少し寂しい気もします。人間の方が劣っているみたいで」

 

「むしろ希望があると言えるかもしれませんよ」

 

「柔軟性があるとか、ですか?」

 

「はい。AIの優れた点に気づき、それを学ぼうとする。それ自体が、人間の素晴らしい特質ではないでしょうか。私たちには、自分を改善していく力がある」

 

「なるほど」

 

「AIは私たちに、より良いコミュニケーションの可能性を示してくれている。そう受け止めるのが良いんじゃないですかね。それを認識し、実践しようとする。その過程で、私たちはより"人間らしく"なれるのかもしれません」

 

Rさんは深くうなずきました。

 

「AIとの出会いで、人間としての在り方を考えさせられる。なんだか不思議な気分です」

 

「でも、それこそがAIがもたらす本当の価値かもしれませんね。単なる便利なツールを超えて、私たち人間の成長を促してくれる存在として」