ダダ飯のビジネスモデル

今回は、少し変わったレストランの話。

お客が代金を払わなくても食事ができる、「善意の循環」に依存した、不思議なレストランがあります。

けっこう世界規模で活動しています。

一見すると破綻しそうなこのビジネスモデル、なぜか持続可能な形で広がりを見せています。

 

このような「善意の循環」を基盤としたビジネスモデルに対しても、AIができることがある。

効率や利益だけでなく、人々の想いをつなぐツールとしてのAI。

その可能性について見ていきましょう。

カリフォルニア発で、世界に広がった、カルマキッチンという名のレストランをご存じですか?

 

カルマキッチンは、無料のレストランです。

客は代金を払わずに食事ができます。

なぜそんなことができるかというと、じつは、前もって別の人が食事代を

支払っているから。

 

客がレストランに入ると、

「あなたの食事は、あなたの前に来た別の お客様によって支払われています」

という説明を受けます。

 

客は、自分の食事代を払いません。

 

ただし、次の人のために寄付したければ、自由な金額を寄付することができます。

寄付のかわりに、ボランティアスタッフとして働くことも可能です。

 

寄付もボランティアもいやだという人は、ただ食事をして店を出ていきます。

それも「あり」となっています。

 

つまりカルマキッチンは(自分のためではなく)だれかの食事のために支払ったり、無償で働いたりする仕組みです。

つまり、人の善意をあてにしています。

 

それで成り立つのか?

寄付せずにタダメシする人だけが殺到したら、破綻するじゃないか?

 

そんな心配もどこ吹く風。

カルマキッチンは世界中に広がりました。

(日本でもポップアップで開催されているようです)

 

こうした「恩送り」のビジネス(?)には、

「ギフトエコノミー」

という名前がついています。

 

ギフトエコノミーとは、ギフト(善意)が人から人へと循環する経済システム。

資本主義に置き換わる新しいシステムになるかもしれないと期待されていますが、このあたりは未知数です。

このカルマキッチンの事例から、私たちは「善意の循環」というビジネスモデルにも、AIの可能性を感じることができます。

 

たとえば、インハウスAIを活用することで、善意の循環を効果的に設計し、運営することができるでしょう。

カルマキッチンのような取り組みでよくある課題は、「どんな人がいくら寄付したのか」「どのくらいの善意が循環しているのか」を把握することの難しさです。

これに対して、インハウスAIは寄付やボランティアの履歴を学習し、最適な運営方法を提案できます。

 

AIは来店客の寄付パターンを分析し、「この時間帯は寄付が少なめになる傾向がある」「このイベントの後は寄付が増える」といった知見を提供するでしょう。

さらに、ボランティアの希望者が多い時期や、逆に人手が必要な時期も予測できます。

これは単なるデータ分析ではなく、「善意の循環」をより滑らかにするための知恵となります。

 

また、分身AI(アバターAI)を活用すれば、店舗スタッフの「想い」や「理念」を24時間発信し続けることも可能です。

たとえば、お店のウェブサイトで「なぜこの取り組みを始めたのか」「どんな未来を目指しているのか」といった質問に、スタッフの言葉で答え続けるAIを設置する。

これにより、単なる「無料レストラン」ではなく、「想いの共有の場」としての価値を高めることができます。

 

アプリAIの活用もできます。

「ギフトエコノミー診断」のようなアプリAIを作成し、来店客一人一人に最適な参加方法を提案することができます。

お金の寄付が難しい人には、その人のスキルや時間に応じたボランティアの形を提案する。

あるいは、SNSでの情報発信という形での参加を提案する。

このように、善意の表現方法を多様化することで、より多くの人が参加できる仕組みを作ることができます。

 

ビジネスにAIを取り入れる際、ともすれば効率や利益の追求に目が行きがちです。

しかし、カルマキッチンの事例は、AIには「人の善意を育て、つなぐ」という別の可能性があることを教えてくれます。

スモールビジネスだからこそ、このような「想い」を中心に据えたAI活用ができるのかもしれません。