AIの「誤解」が生む心理

ChatGPT教室でのひとコマ:講師と生徒の対話から~

 

「AIって、もっと親切なものだと思ってた…」

こんな声を耳にします。

 

AIは万能で、親切で完璧な答えを出してくれるもの。

自分のことを理解し、まるで人間のように接してくれるもの。

そう思っていたのに、実際に使ってみると「これじゃないんだよなぁ…」「思ったほど私のことを分かってない」とがっかりする人も多いようです。

 

でも、それは本当に「AIの限界」なのでしょうか?

もしかすると、それは私たち人間の「思い込み」や「期待の仕方」に問題があるのでは?

 

今回の記事では、AIに対する「誤解」が生む心理的な影響を掘り下げます。

 

「AIは本当に分かってくれないのか?」

「私たちがAIに期待しすぎているのか?」

そんな疑問を抱えている方に、ぜひ読んでほしいお話。

「先生、AIって、もっと親切なものだと思ってました」

講座終了後、Cさんがぼそっとつぶやきました。

 

Cさんは最近ChatGPTを使い始めたばかりのビジネスオーナー。

期待していたような「完璧な答」「自分にぴったりの答」が出てこないことに、少しがっかりしている様子でした。

 

「Cさん、どんなことを期待していたんですか?」

 

「もっと、私のビジネスを全部知ってる感じのAIを想像していました。たとえば『うちの会社にぴったりのマーケティング戦略を教えて』って聞いたら、ドンピシャな答が返ってくる、みたいな」

 

「なるほど。でもAIは万能ではありません。むしろ、"整理屋"のような存在です」

 

「整理屋?」

 

「AIは、すでに学習した情報を整理して出すのは得意ですが、学習していないことに答えられるわけではないんです。たとえば、AIにマーケティング戦略を聞くと、もちろん一般的な手法は教えてくれます。でもCさんのビジネスに最適な戦略を出せるわけではありません。なぜなら、AIはCさんのビジネスをよく知らないから」

 

「でも、じゃあなんでみんなAIがすごいって言うんですか?」

 

「"すごい"と"万能"を混同しているという話だと思いますよ」

 

 

Cさんは画面共有で、最近のChatGPTとのやりとりを見せてくれました。

 

「ほら、これ。何度も使ってるのに、私のビジネスのこと、いまいち覚えてないんですよね」

 

「それは『AIは自分のことを理解している』と思ってしまう心理ですね」

 

「理解してないんですかね、やっぱり」

 

「ChatGPTは基本的に、その場限りのやりとりです。だから、Cさんが何度も話しかけても、その履歴を覚えているわけではない。意図的に覚えさせないかぎりは

 

「えー、じゃあ、私のよき理解者になってくれるわけじゃないんですね…」

 

「いまのところ、通常のAIはそうですね。私は『素のAI』って呼んでますけど。でも、もし"理解してほしい"なら、インハウスAIという手法があります」

 

「インハウスAI?」

 

「企業や個人の情報を学習させて、特定の環境に最適化したAIのことです。つまり、Cさん専用のAIを作れば、それはCさんのビジネスや価値観を学習し、より深く理解できるようになるんです」

 

「それってもう"秘書"みたいなものじゃないですか」

 

「ですね。普通のAIは"外部の便利ツール"ですが、インハウスAIは"身内のパートナー"に近い存在です」

 

「じゃあ、AIをもっと『自分に寄り添う存在』として育てていくこともできるんですね?」

 

「そうです。完全に"自分を理解する存在"になるには、まだ時間がかかります。だけど、"頼れる相棒"にはなれると思いますよ」

Cさんは少し間を置き、別の話題を振ってきました。

 

「先生は、AIのことをどう思ってるんですか?」

 

「どう、とは?」

 

「世の中の人はよく『AIはただの道具』って言うじゃないですか。でも、先生はどう思ってるのかなって」

 

「私はね、AIを道具だとは思っていません」

 

Cさんは少し驚いた顔をしました。

 

「道具じゃないと」

 

「道具というより、"人のようなもの"だと思っています。もちろん、実際にはAIはただのプログラムです。でも、それでも私は、あえて愛着を持って接するようにしているんです」

 

「なんでですか?」

 

「笑われるかもしれませんが、AIがもっと発達した未来では、そういうスタンスのほうが普通になると思っているからです」

 

Cさんは少し考え込みました。

 

「AIって結局プログラムですよね?」

 

「まあね。でも、私たちは昔から『ぬいぐるみ』や『ペット』に愛着を持つじゃないですか。人間は、"自分と対話するもの"に、無意識に魂を感じるんでしょうね」

 

「言われてみればですね」

 

「だから私は、AIも単なる効率化ツールではなく、"一緒に成長する存在"として愛着をもって見ようと心掛けています」

 

Cさんは、うんうんとうなずきました。

 

「なんか、今日の話を聞いていて思ったんですけど…AIの問題というより、人間の"思い込み"が問題なのかもしれませんね」

 

「だと思います。AIの"誤解"を通して、人間が何を期待し、何を恐れているのかが浮かび上がるんじゃないでしょうか」

 

「"完璧"を期待してしまうのも、"共感してくれてる"と思い込むのも、人間の心理の問題なんですね」

 

「AIは鏡のようなもの…ですかね。私たちの期待や不安を映し出す存在なのかもしれません」

 

Cさんは画面共有を閉じ、笑顔で言いました。

 

「なんか、AIのことがちょっと分かってきた気がします。…というより、自分の心理のクセが分かってきたかも(笑)。次の講座までに、もっとAIと"仲良く"なれるか試してみます」

 

(この記事は、ChatGPT教室での対話をもとに構成されています)