ソーシャルスキルのビジネスモデル

「SNSのフォロワーが数千人」「ブログ読者が数万人」「セミナーを告知すると即日満席」。

こうした人々の存在を、あなたも知っているのではないでしょうか。

彼らは必ずしも有名人ではありません。

ただし、現代のビジネスにおいて重要な能力を持っています。

それは「ネット上で人々とつながり、共感を生み出す力」です。

 

かつて、こうした能力は体系的なビジネススキルとして認識されていませんでした。

人によって「持って生まれた才能」と考えられたり、あるいは「SNSネイティブ世代だからできること」と片付けられたりしてきました。

 

しかし、そんな状況が大きく変わろうとしています。

AIの登場により、このスキルを学び、磨くための新しい方法が生まれてきたのです。

 

本記事では、ネット時代に不可欠な「ソーシャルスキル」について、その本質と、AIを活用した習得方法を考えます。

ソーシャルスキルとは

ここでいうソーシャルスキルとは、「人づきあいの良さみたいなもの」「社会のルールを守るみたいなこと」ではなく、

  • コミュニティを作る能力
  • ファンを増やす能力

とくに

ネット上でそれができる能力

を指します。

 

たとえば、売れっ子芸能人でもなくトップアスリートでもなく政治家でもないのに

  • SNSで友達やフォロワーが何千人
  • ブログやメールマガジンの読者が何千人
  • こうしたツールでセミナーやイベントの案内をするとあっという間に満席になる

 

そのような人がいます。

そのような人が身につけているスキルを、ここではソーシャルスキルと呼びましょう。

これまでのビジネススキルになかったもの

ソーシャルスキルをビジネススクールで教えることはあまりないようです。

つまりある意味ビジネススキルとして認識されていないものでした。

いわゆるMBA的な価値観で展開される従来型のビジネスにおいては、とくに必要とされていなかったのです。

というより、そのようなスキルが存在することすら、意識されていなかったと思われます。

 

ネットが発達した現在、ソーシャルスキルは明らかにビジネススキルの1つとして認識すべきものになっています。

ところがスキルとして認識されていなかった過去があるために、従来型のビジネスに染まっている「優秀な」人ほどソーシャルスキルを持ち合わせていません。

一方でビジネスの知識はあまり持っていないにも関わらず、生まれつきソーシャルスキルが豊かであるために、ファンがたくさんいて、ビジネスが順調。

そういう人がいます。

 

これまでのビジネススキルとはいったい何だったのか。

そう問いたくもなります。

ソーシャルスキルの欠如は致命的かもしれない

ネットの発達は個人でもビジネスがしやすい、そういう環境をもたらしています。

同じ会社にずっと勤務するという終身雇用制も崩れつつあります。

副業を解禁する企業も出てきました。

この新しい環境下では、大きな企業に属しているということにあまり価値がありません。

サラリーマンをやめて個人でビジネスをしようという人が、これからどんどん増えるでしょう。

 

しかし大企業勤めの優秀なビジネスマンが副業に手を染めたり脱サラして独立したりしたら、それでバラ色なのか、というと、必ずしもそうではないようです。

 

  • 副業に失敗する
  • 定年退職後に独立したものの失敗する

 

そのようなことがよく起きています。

 

失敗の理由はいろいろあるでしょうが、ネット上の集客がうまくいかなかった、すなわち

ソーシャルスキルの欠如による失敗

が、かなりあるのではないかと思います。

ソーシャルスキルはどうやって学ぶのか

生まれたときSNSはすでにあったというネイティブな人はソーシャルスキルをわざわざ学ぶ必要がないでしょう。

しかし後天的にネット社会を経験した私のような世代が今後もビジネスを牽引していきたいなら、わざわざソーシャルスキルを学ぶ必要があります。

 

ではどこで学べるのか。

 

残念ながら、前述したように、既存のビジネススクールで教えることはあまりないようです。

 

ソーシャルスキル豊かな人に個人的に教わるテもありそうですが、「言語化された状態で体系的に教わることができるか」というと、疑問です。

どちらかというと料理人の修業のような感覚的なものになるかもしれません。

 

要するに、

きちんとしたカリキュラムとして学べる状態には、まだなっていない

ということなのでしょう。

 

けれども、この状況を別の視点で考えることができます。

すなわち、

ソーシャルスキルを体系的に学べるカリキュラムがないのであれば、それを提供するビジネスが生まれてもいいじゃないか

ということです。

 

「後天的にネット社会を経験した世代を対象にソーシャルスキルを教えるビジネス」

は、向こう10年くらいはイケるのではないかと思われます。

ソーシャルスキルとAIの相乗効果

ソーシャルスキルを学ぶ機会が限られているという課題に対して、AIの登場は新たな可能性を開いています。

特に注目すべきは、AIがソーシャルスキルの「見える化」と「体系化」を支援できる点です。

 

たとえば、SNSでの発信内容をAIに分析してもらうことで、どのような投稿が反応を集めているのか、どのようなコミュニケーションパターンがフォロワー増加につながっているのかを、データに基づいて理解できるようになります。

これは従来の「感覚的な」ソーシャルスキル習得から、より客観的で再現可能な学習へのシフトを可能にします。

 

さらに興味深いのは、AIをソーシャルスキル向上の「練習相手」として活用できる点です。

ChatGPTなどの対話型AIを使えば、様々なコミュニケーションシナリオをシミュレーションできます。

たとえば、難しい質問への対応や、クレーム処理の練習を、実際の人間相手にする前にAIと行うことで、安全な環境で経験を積むことができます。

AIは私たちのソーシャルスキルを磨くための「道場」として機能します。

 

特に個人事業主やスモールビジネスのオーナーにとって、このアプローチは実践的な価値があります。

たとえば、メールマガジンの文章をAIと共同で推敲することで、読者により響く表現を見つけられます。

また、SNSの投稿計画をAIと一緒に立てることで、より戦略的な情報発信が可能になります。

 

実際の活用例を挙げてみましょう。

あるセミナー講師の方は、セミナーの告知文をAIと共に作成し、さらにそのセミナーの想定質問をAIと一緒に考えることで、より充実した内容を提供できるようになりました。

コミュニティ運営者の方は、AIを活用してメンバー間の交流を促進する企画アイデアを生み出し、より活発なコミュニティ作りに成功しています。

 

このように、ソーシャルスキルとAIは、互いを補完し合える関係にあります。

人間らしい温かみのあるコミュニケーションの基礎の上に、AIによる効率化や最適化を重ねることで、より効果的なソーシャルスキルの発揮が可能になるのです。

 

今後は、「ソーシャルスキルを教えるビジネス」自体も、AIとの協業を前提とした形に進化していくでしょう。

たとえば、受講者一人一人の特性や課題に合わせて、AIがカスタマイズされた学習プランを提案する。

そして、その実践過程でAIがフィードバックを提供しながら、人間の講師がより本質的な指導を行う。

このような「人間とAIの良いとこ取り」が、これからのスタンダードになっていくのではないでしょうか。