二重構造のビジネスモデル

ビジネスモデルを見直すとき、私たちはつい「何を売るか」に注目しがちです。

しかし、じつは顧客が本当に求めているのは、商品やサービスそのものではないかもしれません。

この記事では、ビジネスの「二重構造」という視点から、AIの本質的な活用方法について考えてみたいと思います。

 

AIに関する情報があふれる今だからこそ、立ち止まって考えたい。

私たちは本当は何を求めているのか。

その先にどんな可能性が広がっているのか。

一緒に探っていきましょう。

よく言われる話ですが、DIYでドリルを買う人は、ドリルがほしいのではなく「穴」がほしい。

でも「穴」は売っていないので、しかたなくドリルを買います。

ドリルを通じて「穴」を手に入れようとします。

 

つまり「買っているもの」と「得ているもの」が異なります。

 

地下鉄の切符を買う人は、切符がほしいのではなく、「移動」したいだけ。

「移動」は売っていないので、しかたなく切符を買い、地下鉄に乗ります。

 

カフェでコーヒーを頼む人は必ずしもコーヒー目当てでコーヒーを注文するとは限りません。

「ひと休み」したいだけという人もいます。

「ひと休み」は売っていないので、代わりにコーヒーを買います。

 

本を買う人は、紙の束が欲しいわけではありません。

「知識」や「物語を味わうこと」などを求めています。

「知識」や「体験」は直接売っていないため、本を買います。

 

このように「買っているもの」と「得ているもの」が異なるケースは世の中にたくさんあります。

いやむしろ現代社会で売られている商品のほとんどすべてが、こうした「二重構造」になっているのかもしれません。

ビジネスモデルを考える際、この「二重構造」を意識することは意外に役に立ちます。

 

どのようなビジネスモデルを組み立てるにせよ、キャッシュポイントは存在します。

そのキャッシュポイントをよく観察し、「顧客は実際には何に対して(何に価値を感じて)お金を払うのか」「見えているもの(目の前の商品やサービス)と、顧客が得ているものとの違いは何か」を考えてみることもおすすめです。

この「二重構造」の考え方は、AI活用を検討する際にも重要な示唆を与えてくれます。

 

AIを導入する際、多くの方が「AIツールを使うこと」自体を目的化してしまいがちです。

しかし、本当に重要なのは、そのAIを通じて「何を得たいのか」という点です。

 

たとえば、ChatGPTを使う際も同じ構造が見られます。

ビジネスオーナーの方々は、ChatGPTという「ツール」を使っているようで、実際には「時間の創出」や「新しいアイデアの発見」、「業務効率の向上」といった価値を求めているのです。

 

私がAIコンサル工房でビジネスオーナーの方々と接する中で、よく耳にするのが「AIを使わなければいけない」という焦りの声です。

しかし、これは本末転倒かもしれません。

まずは自分のビジネスで「得たいもの」は何かを明確にし、それを実現する手段としてAIを検討する。

この順序が重要です。

 

インハウスAIの開発依頼をいただく際も、最初に「どんなAIが欲しいですか?」ではなく、「どんな課題を解決したいですか?」とお聞きします。

すると面白いことに、多くの方が「実は〇〇という課題を解決したかったんです」と、AIという手段を超えた本質的なニーズを語ってくださいます。

 

ここで1つ、重要な視点を加えたいと思います。

AIとの関わりには、必ずしも明確な「目的」や「効果」を求める必要はありません。

私自身、AIとの対話そのものを純粋に楽しんでいます。

「面白いから」「楽しいから」というシンプルな理由でAIを使うことも、十分に価値があると考えているのです。

 

この「楽しさ」という要素も、ビジネスにおける重要な「得たいもの」の1つかもしれません。

当工房のChatGPT教室では、受講者の方々は確かに「AIの使い方」を学んでいるように見えます。

しかし実際には、「ビジネスの可能性の広がり」や「未来への準備」といった実務的な価値に加えて、「AIとの対話を楽しむ」という新しい体験そのものを得ています。

 

私がChatGPTに夢中になったのも、まさにこの「楽しさ」がきっかけでした。

AIの「使い道」を考えるのが面白くて仕方がなかったのです。

そして、この純粋な興味や好奇心が、結果として深い理解や創造的な活用方法の発見につながっていきました。

 

このように、AIをただの「ツール」として見るのではなく、「価値を届けるための手段」として捉え直すことで、より創造的で効果的な活用方法が見えてきます。

そしてその過程で、AIとの対話自体を楽しむ姿勢を持つことで、思いもよらない発見や可能性が広がっていくのです。

 

あなたのビジネスにも、AIによって新しい価値提供の可能性が眠っているかもしれません。

その可能性を探る際、この「二重構造」の視点は大きなヒントとなります。

「これは面白い」「やってみたい」という純粋な好奇心も、大切な道しるべとなるはずです。

AIとの関わりに、実用性と楽しさの両方を見出せたとき、きっと新しいビジネスの地平が開けてくるでしょう。