ChatGPT教室で面白い発見がありました。
受講生の方から「AIに締切を設定したら、より良い回答が出るようになった」という報告があったのです。
私も気になって試してみると、確かにある程度の効果が見られました。
ただし、人間に対するような単純な締切プレッシャーは、AIには通用しないこともわかってきました。
今回は、AIに対する「締切」の効果について、実際の試行錯誤をもとにお話ししたいと思います。

まず、効果が見られた例から。
受講生のKさんは、商品説明文を書くときに「これは明日の朝9時までに完成させる必要がある文章です」と伝えてからタスクを依頼したところ、通常より簡潔で要点を押さえた文章が返ってきたと言います。
実際に私も試してみましたが、確かに無駄な装飾的表現が減り、ビジネスライクな文章になる傾向がありました。
しかし、ここで注意が必要です。
AIに対する「締切」は、人間に対するものとは本質的に異なります。
AIは疲れを知らず、プレッシャーも感じません。
実際の時間の経過も認識していません。
なのになぜ、締切を設定すると出力が変わるのでしょうか。
答えは、「文脈理解」にあります。
AIは「締切がある」という情報を、「より簡潔で重要度の高い情報を優先すべき状況」という文脈として理解するようです。
つまり、締切を設定することで、出力の優先順位や表現スタイルが変化するわけです。
これを理解すると、より効果的な依頼(※)の仕方が見えてきます。
たとえば、長文のレポートを依頼する際、たんに「明日までに」と伝えるのではなく、
「これは明日のミーティングで使用する資料です。簡潔な要約と重要ポイントを優先的に示してください」
というように、具体的な状況と優先順位を示すと良いでしょう。
(※)私はAIに対しては、「指示」や「命令」という言葉よりも、「依頼」という言葉のほうを好みます。笑われるかもしれませんが、そこはこだわりです。

逆に、アイデア出しのような創造的なタスクでは、締切を設定することでかえって画一的な回答しか得られなくなる可能性があります。
この場合は「時間をかけてじっくり考えてください」と伝える方が、より豊かなアイデアが得られるかもしれません。
ChatGPT教室での実験では、以下のような場面で締切設定が特に効果的でした。
- ビジネス文書の作成
- データの要約や分析
- 会議資料の準備
- メールの下書き
一方、以下のような場面では、締切を設定しない方が良い結果が得られました。
- 新規事業のアイデア出し
- クリエイティブな企画立案
- 問題解決のための自由な発想
この違いは、タスクの性質によるものです。
定型的で明確な目的を持つタスクでは、締切による優先順位付けが有効です。
一方、創造性や柔軟な発想が必要なタスクでは、時間的制約を設けない方が、AIの能力を最大限に引き出せるようです。

最後に、ひとつ興味深い発見を共有させてください。
「3時間以内に」と「明日の朝まで」では、同じ時間幅でも異なる結果が得られることがあります。
これは、AIが文脈から「緊急度」や「重要度」を読み取っているためと考えられます。
このように、AIへの「締切」の効果は、実は「時間」そのものではなく、その状況がもたらす「優先順位」や「文脈理解」にあるのです。
私たち文系の人間にとって、これは非常に興味深い示唆を与えてくれます。
AIと付き合う上で、このような「AIの特性」を理解することは、とても重要ですし、面白いですね。
今回の「締切」の話も、そんなAIの特性を垣間見せてくれる、良い例だと思います。
皆さんも、ぜひ自分なりの「AIへのプレッシャーの与え方」を探してみてはいかがでしょうか。
きっと、新しい発見があるでしょう。
AIの世界は日々進化しています。
私たちもまた、そんなAIとの付き合い方を、日々楽しんでいきたいものです。