孝行のビジネスモデル

「孤独」という言葉に、あなたはどんなイメージを持っていますか?

社会問題として語られることの多い孤独。

たしかにそれは深刻な課題です。

しかし、その陰で静かに広がっているのが「孤独市場」。

社会の変化とともに確実に拡大を続けているこの市場にも、注目してみましょう。

 

AIの登場は、この市場に新しい可能性をもたらしています。

人との触れ合いを求める人がいる一方で、むしろ「質の高い孤独」を楽しみたい人もいる。

そんな多様なニーズに、AIは思いがけない解決策を提供してくれます。

 

この記事では、アメリカの「孫レンタル」サービスの事例から始めて、AIがもたらす新しいビジネスの可能性まで、「孤独」を切り口としたビジネスモデルについて考えていきます。

WHO(世界保健機関)は「健康」をだいたい以下のように定義しています。

 

「身体的- 精神的- 社会的に良い状態」

(単に病気でなければよい、ではない)

 

昔は健康といえば単純に「身体的な健康」を指していました。

近年は「精神的な健康」の大切さも認識されるようになっています。

 

WHOの定義にはもう1つ「社会的な健康」がありますが、これについては重要性がまだ広く認識されるに至っていません。

 

社会的健康とは、シンプルに言えば

「人とのつながり、社会との接点が不足していない状態」

だと解釈できます。

 

たとえば年齢を経て退職するなどして、人とのつながりが減り、社会との接点が小さくなると、孤独になり、社会的健康にガタがきます。

(日本人男性に多いパターンですね)

 

 

アメリカの話ですが、「孫のレンタル」をやってるベンチャー企業があるようです。

 

退職した年配者のなかには

  • 孫がいない
  • いても近くにいない

というケースが少なくありません。

そこで「孫のレンタル」の登場です。

 

そのベンチャー企業(社名は「パパ」)は、会員である年配者のリクエストに応じて「パパパル」を派遣しています。

パパパルとは、

  • パパ(papa:お父さん)
  • パル(pal:友だち)

の合成語です。

「孫」の役割を担ってくれる若者のことで、基本、大学生。

 

  • おしゃべりする
  • SNSの使いかたを教える
  • (ボードゲームなどの)相手をする
  • 買物や病院につきあう

みたいなことをしてくれます。

 

「良い孫として振る舞うための訓練」

も受けているようです。

ただし介護サービスではないので、介護みたいなことはしません。

 

パパパルになるにはわりと厳しい審査があり、審査の合格率は25人に1人(!)。

利用料金は1時間3000円くらい、このうちパパパルの手取りは6割ほどだそうです。

 

「ママパル」ではなく「パパパル」なので、利用者は男性が多いのかもしれません。

 

なお、このアメリカの事例に触発されたものなのか、オリジナルに発案したものなのかは不明ですが、日本にも「孫のレンタル」はいくかあるようです。

この「孤独市場」と呼ばれる領域において、AIは単なる効率化ツールを超えた、新しい可能性を提供してくれます。

 

たとえば、一人暮らしの高齢者向けのサービスを考えてみましょう。

従来は「話し相手がいない」という課題に対して、ヘルパーの派遣やデイサービスなど、人的リソースに依存した解決策が主流でした。

しかし今、インハウスAIを活用することで、24時間365日、その人に寄り添い続けるデジタルパートナーを作ることができます。

 

このAIは単なる会話相手ではありません。

その人の生活リズム、健康状態、趣味嗜好を学習し、きめ細やかなケアを提供できます。

たとえば、食事の時間になると好みに合わせたレシピを提案したり、服薬の時間を優しく知らせたり、昔の思い出話に耳を傾けたり。

まるで「デジタルな家族」のような存在を創り出すことができるのです。

 

選択的に独身生活を送る人々向けには、アプリAIを活用した新しいサービスが考えられます。

たとえば、

  • その人の趣味や関心事を深く理解し、カスタマイズされた学習コンテンツを提供するAI。
  • その人の創作活動やプロジェクトのパートナーとして、アイデアを出し合い、フィードバックを提供するAI。

これらは、「質の高い独習」や「創造的な孤独」を支援する新しい形のサービスとなります。

 

「分身AI(アバターAI)」の可能性にも注目したいですね。

たとえば、独居老人の方の分身AIを作成し、離れて暮らす家族とのコミュニケーションを補助する。

あるいは、亡くなった配偶者の思い出や価値観を学習したAIを作成し、その人らしい対話や助言を提供する。

ただし、これらは「深い人間理解」と「倫理的な配慮」がとくに必要となる領域です。

 

重要なのは、これらのAIソリューションは、決して人間的な温かみや実際の人とのつながりを否定するものではないということです。

むしろ、人と人とのリアルな関係性を補完し、より豊かにする可能性を持っています。

 

「孤独市場」に参入を考える事業者の方々には、ぜひAIの可能性も視野に入れていただきたいと思います。

人間の感性とAIの能力を組み合わせることで、従来にない価値を提供できる可能性が広がっているからです。

 

AIコンサル工房でも、このような新しいビジネスの可能性を、皆様と一緒に探求していきたいと考えています。

 

⇒(参考)ひとりぼっちのビジネスモデル